睡蓮亭銃声

そしてロウソク。ロウソクがなくてはね。

手にした舵で宙を切ってみる:『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』練習問題2

・これまでのあらすじ:

simiteru8150.hatenablog.com

〈練習問題2〉ジョゼ・サラマーゴのつもりで

 一段落~一ページ(三〇〇~七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。
テーマ案:革命や事故現場、一日限定セールの開始直後といった緊迫・熱狂・混沌とした動きのさなかに身を投じている人たちの群衆描写。

 団員の誰もが最終処分場と呼んでいるその建物は何が入っているのか見当もつかない錆びたコンテナ群が第二の壁のようにぐるり置かれていて防音の役割を果たすのだからただでさえ人通りの少ない立地であることも相まって任意の人間を痛めつけるのに最高の場所であったことは確かでその日は監視役の仕事を与えられていたうすのろのヴァーディーゴはつい最近まで不思議なぐらい羽振りのよかった同僚のいや正確を期して言うならば数刻前までは同僚だったマシアスが鎖に繋がれその日の拷問官役を担当していた隻腕のドットとその横に佇むボスのパパ・オセアーノのひどく不機嫌で冷酷な面の底にある怒りをどうにか冷やそうと焼石にかける小便のような必死の言い訳をしているのをぼんやりと聞きながら約束をたがえた人間というのはどうしてこうも同じようなパターンで弁解してしまうのだろうかちょっと面白くなっていたのだけれどそんな風な奇矯な興味を持ってこの場に接しているのはこの男くらいであり同様に見張りを務めている愛煙家のムスタファは立って目を開けながら眠るというイルカのような器用な芸当をこなしていたしサディストのイセオはどうせ麻薬の持ち出しをしたにほぼ決まっているのにそれを認めようとしない男の哀れな姿に興奮して巨体を縦に横に斜めに揺することで起こるズボンの摩擦だけで器用に陰部をなでさするばかりでその他の団員たちももう劇的なことは起こらないだろうと踏んでいるため場内に請願と重たい殴打の音とパパ・オセアーノの肉でだぶついた苛立ちの講釈が混ざり響いてもそこに通底するのはどことなく緩慢な空気であり人と話すときはこうして思考ばかりが先走っておよそうまく喋れないがゆえにうすのろ呼ばわりされているヴァーディーゴの実は精緻な脳にひたひたとその情景が記録されてゆき彼は一日の生活リズムをひどく気にするドットが昼飯時までに殴殺してしまうか案外気の長いパパがそれでも痺れを切らして懐中のごつい拳銃でひたいを撃ち抜くか確率は六対四くらいかなと独自の計算式で導き出していた。

 

雑感

・ふたつレギュレーション違反を犯していることに合評会の場で指摘されてはじめて気がつき(ナカグロ・の使用による文章の区切りの発生、ラストの句点の存在)、そして今気付いたんですが文字数も超過していますね。未熟!

・「数刻」という言葉遣いがそぐわないのでは、という指摘もあって、これもその通りだと思った。この文章だと「(具体的な数)分」にしたほうが雰囲気出ましたね。

・けっこう寄り道のある文章がラストで登場人物の思考に収束するつくりが面白いと言われたのはわりと嬉しい。

・ギャングのイメージは完全にこの漫画をもとにしている。名作ですよね。

・あと読んでみたいけれど読めていない本のイメージを自分で勝手に創作したフシもある。

・ふだん使っていない筋肉を伸ばすようなことをやっているのだから、どうせならふだん自分が積極的に書こうとしない類のお話を意識して書くようにしていて、これはこれでちょっと面白い。

・以降の練習問題もがんばって取り組んでいきたい所存です。